まず、折木奉太郎と千反田えるの登校シーンから。
- 奉太郎:それで・・・チョコはどうするんだ?
- える:それが・・・摩耶花さん、どうしても漫画研究会が抜けられないらしくて・・・ですから、部室に置いておくとか。
バレンタインチョコですよ。しかも、一年前のリベンジがかかっていて、周到に準備して作ったチョコレートを、本人に手渡しするどころか、漫研を優先すること自体にそもそも違和感が。 「漫画研究会が抜けられない」のであれば、夜にでも逢う約束をすればいいわけで・・・。二人の間柄なら難しいことではないはずでしょうし。
次に、放課後の廊下のシーン
- 福部里志:奉太郎、これから部室に行くのかい?
- 奉太郎:いや、みぞれがやむか雪になるまで図書室で待つ。部室は寒いからなぁ。お前は部室か?
- 里志:うん、そうだよ。
- 奉太郎:伊原は漫研で来られんそうだな。
- 里志:耳が早いね〜。千反田さんか。
里志は、摩耶花が漫研を優先すること、つまり、チョコレートを手渡しするつもりがないことを知っているわけです。
ということで、ここまでで明らかになるのは、
- 古典部の部室を舞台にして、チョコレートを受け取る・受け取らないということで里志が気持ちを表明し、摩耶花がその結果を受け入れるという段取りを、摩耶花と里志の二人で考えていた。
そして、もう一点。
- 摩耶花は、えるが部室で里志が来るのを待つことを前提としている、というよりも、漫研を優先することをえるにあえて伝えることでそのように仕向けた。つまり、えるがその場に居れば、里志はチョコを嫌でも受け取らざるを得ないだろうと摩耶花は計算していた。
そもそも、古典部の部室を舞台にすることを提案し押し切ったのは、摩耶花のほうでしょうね〜。里志からすれば、その場にえるや奉太郎が居合わせる可能性があることを思えば、そして、チョコを受け取らないつもりでいるのであればなおのこと、部室はアウェイ状態もいいところでしょうし。
で、いろいろとあって、その後ですが・・。
古典部部室で4人が揃った時のシーンから。
- 伊原摩耶花:そっか・・・盗まれちゃったか・・・。
- える:摩耶花さん、私・・・。
- 摩耶花:そんな顔しないで。ちーちゃんが謝るようなことなんて、なんにもないよ。でもちょっときついかな。
摩耶花の「でもちょっときついかな」というのは、チョコが盗まれたことがショックなのではなくて、里志に今年もまたチョコを受け取ってもらえなかったことがショックだということなんですよね〜。摩耶花は、チョコを盗んだのが誰なのかも、どうして盗んだのかも、すぐに気付いたわけですから。
そして、橋の上でのシーン。
- 里志:奉太郎みたいにはうまくいかないね。僕と摩耶花の誤算は、千反田さんだった。
二人が部室を舞台にした審判方法を共謀していたことが、ハッキリとします。
「誤算は、千反田さんだった」というのは、チョコが消えたことでえるがあれほどまでに自らを責めることになるとは予想もしなかった・・・ということでしょう。摩耶花は、チョコが消えるという事態は想定していなかったでしょうけれど。
里志も里志ですが・・・摩耶花は、どうして真相をえるにすぐ話そうとしなかったのかと。自分としては、摩耶花の振る舞いにも、問題があるように思えるんですよねぇ。
えるが追いかけてこなければ、その日のうちに真相を話す機会は無かったかもしれず、そうなれば、えるは自らを責める時間がいたずらに長くなったわけです。奉太郎が例の内容で電話をしてきても、あの説明ではえるが自責の念に駆られている部室の管理責任上の問題の解決にはならないですからねぇ。
で、えるが追いついた時には、早々に潔く謝るという・・・このあたりの自己中心的とも思える振る舞いが、ちょっと。
えるが追いかけてこなければ、その日のうちに真相を話す機会は無かったかもしれず、そうなれば、えるは自らを責める時間がいたずらに長くなったわけです。奉太郎が例の内容で電話をしてきても、あの説明ではえるが自責の念に駆られている部室の管理責任上の問題の解決にはならないですからねぇ。
で、えるが追いついた時には、早々に潔く謝るという・・・このあたりの自己中心的とも思える振る舞いが、ちょっと。
それにしても、えるは、摩耶花の説明でよく落ち着きを取り戻すことができましたねぇ。摩耶花を責めることもなく・・・。この作品は、摩耶花や里志、奉太郎の至らなさがどうのこうのというよりも、そうした欠点をすべて包み込んでしまうえるの大きさを讃えるべきなのかもしれません。
そういえば、奉太郎の犯人でっち上げですが、方便とはいうもののまかり間違えば本人に影響が及んだ可能性もあるわけで、やはり少し残念なやり方だったと思います。
ところで、えるの自転車の前輪なのですが、キャップが無いように見えるのですが w