昨日、図書館で借りてきた『追想五断章』(米澤穂信 集英社)を読み終わりました。
たくさんある米澤穂信さんの本の中で、古典部シリーズ以外の一冊としてこの作品を選んだのは、『氷菓』に似た部分があるという感想を読んでいたことと、松本市が登場するということが大きな理由です。
松本駅は以前の駅がモデルとなっているようです。この作品が「小説すばる」に掲載されたのが2008年6月号からで、松本駅の駅舎改築完成が2007年9月ですから、新しい駅になった後にあえて古い駅の描写しているわけです。
さらに公衆電話の場面などからもわかるように作品の時代はもっと遡ることに・・・と書いたところで、最初の方に具体的な年代が書かれていたことを思い出しました w 9ページ(単行本)にちゃんと「平成四年」と書いてあります。1992年ですね〜。
内容的にも一気に読みたくなるような面白さがあって、実際に楽しんで読めましたけれども、自分としてはやはり古典部シリーズのほうが好みです。
というのは、大前提として、災害や事故、事件で痛ましいニュースが連日飛び込んでくる昨今、創作の世界においてまで殺人や暴力に触れたくないという気持ちが強いんですよね〜。こうした気持ちは2011年3月の東日本大震災以降、そして歳をとるに連れてしだいに強まっている感じがします。
なので、人が死なないミステリーという面を持つ古典部シリーズは、純粋に楽しめる貴重な存在となっています。
米澤穂信さんには必ずしも古典部ではなくてもいいので、人が死なないミステリーという分野で作品をたくさん書いてもらえたらなァと願っています。
そうそう、この作品には久瀬笙子という女性が登場するのですが、いまひとつ活躍の場がないままに舞台から消えてしまった印象があるのが残念でしたね〜。
追記 1
『壷天』という同人誌が出てきますが、生前、父が友人たちを自宅での酒宴に招く際、洒落で自宅を「壷中庵」と呼んでいたことを思い出しました w
追記 2
「アントワープの銃声」事件というのは、「疑惑の銃弾事件」とも呼ばれる「ロス疑惑」をヒントにしたのでしょうかね〜。
追記 3
朝霞句会の宮内正一は市橋教授を嫌っているような印象を受けましたが、この二人の間には何があったのでしょう。見落としているですかねぇ。