七人ミサキ
— 幣束 (@goshuinchou) May 28, 2020
四国に特に多いとされる憑き物、怨霊的な存在である七人ミサキに纏わる場所へ行ってきた。愛媛県南予の山中。詳細な地名等は伏せて写真もあまり載せないようにする。と言ってもこの話自体は自治体の昔話の本に載っているものである。こういうのを見たくない方は見ないで下さい。では始める pic.twitter.com/WonX4UubDs
その昔、南予の山中の集落の外れに富裕な長者の屋敷があり、長者と妻と5人の子ども達、合わせて7人が暮らしていたが、ある時、何者かがこの家を襲い一家全員殺されてしまった。
— 幣束 (@goshuinchou) May 28, 2020
その場所を現地の方に聞いてもそんな地名は知らぬという。最終奥義「教育委員会に電話」をした所、今から案内しますとの事
先日から役場を通じて地名の紹介等を行った為、伝承地に行きたがってる変な奴がいるというのが伝わっていたようで、スムーズに事が運んだ。まさか今から案内してくれるとは思わなんだ。恐縮感謝である
— 幣束 (@goshuinchou) May 28, 2020
場所に詳しい地元の年輩の方と教育委員会の方2名、車2台でその場所に向かう。写真左の山の中だそう pic.twitter.com/CP9l7WktlX
山中からさらに山道と未舗装の林道を15分ほど登ると少し開けた場所があり、ここがその長者の屋敷があった土地である。もちろん伝説、昔話の場所であり本当に屋敷があったのかはわからぬ。しかし組まれた石垣がいくつか残っており、ここに人が居た事は確かであるとの事。 pic.twitter.com/d06M2lJmJH
— 幣束 (@goshuinchou) May 28, 2020
ここに住んでいた長者一家が殺された後、集落で奇怪な事が立て続けに起こり、長者一家の浮かばれない霊が祟りをなす「七人ミサキ」になったのだ、として僧侶に鎮魂してもらい、集落を流れる川の中の大きな岩に七人の霊を封じ、毎年施餓鬼の時に念仏を唱える事とした。これを怠ると集落に災難があるとう pic.twitter.com/f7iK2HsrFm
— 幣束 (@goshuinchou) May 28, 2020
「七人ミサキ」は行旅人などに取り憑く七人の霊の集合体のようなものとされ、各地で語られるが中四国が特に多いようで、高知の長宗我部家の内紛に纏わるもの、遍路行者の霊、山伏の霊、海難事故の死者霊、旅人の霊等様々にバリエーションがある。よく知られるのは狙われた者が七人の霊に取り殺されると
— 幣束 (@goshuinchou) May 28, 2020
その者は七人ミサキのうちの一人になり、代わりに今までの七人の霊のうち一人が"成仏"する。そのサイクルが七人ミサキであり、つまり自分が"成仏"するにはあと7人を取り殺さなければならない。なので七人ミサキは激しく祟り人を取り殺す、というお話パターン。しかし七人ミサキはバリエーション多く、
— 幣束 (@goshuinchou) May 28, 2020
とりあえず怨霊となった7人の霊が激しく祟るのは七人ミサキと呼ばれる、というくらいの解釈でよいであろう。今回のこの場所の七人ミサキもそんなかんじ
— 幣束 (@goshuinchou) May 28, 2020
さて、集落の近くを流れる川の中洲、大きめの岩がある。ここが長者一家七人の霊が封じられた場所。毎年の施餓鬼では必ず七人ミサキに念仏を捧げる pic.twitter.com/HtVkk324bt
その後集落でその年亡くなった新仏を供養する。この風習を止めようと提案した者がその数日後に亡くなったということである。まこと恐ろしや七人ミサキ…
— 幣束 (@goshuinchou) May 28, 2020
完
ではなくこの話にはさらに続きがある。この川には七人を封じた岩は既に無い。50年以上前、この話を知らぬ採石業者が岩を持っていってしまった pic.twitter.com/kuUoonu9fH
川は国(ほんとにそうかは知らん)の所有なので業者が国に掛け合って勝手に持ってった、という現実的な話。
— 幣束 (@goshuinchou) May 28, 2020
七人ミサキの岩が無くなってから、集落の人の死傷や事故が相次いだ。区長の奥さんも倒れた。岩が無いことに気付いた集落の人達はこれが七人ミサキの祟りであるとして、必死に探して買い戻した。 pic.twitter.com/PfDEyH3NE2
そしてこの岩を、集落内にある神社の神前に置いて永劫お祀りすることとした。
— 幣束 (@goshuinchou) May 28, 2020
というわけでこれが殺された長者一家の七人の怨霊が封じられた七人ミサキの岩である。それと知らなければスルーするような自然さであるが岩の上からは木が生え、長い年月が経っている事がわかる。とりあえず読経した。 pic.twitter.com/DMrrSRKYRI
我が国に於いては古来より巨石巨岩に神霊が宿るとされる。岩に神が宿るならタタリなす七人ミサキもまた宿るのである。モノに魂宿すは人と歴史と風土。祟り神多き四国の伝説の場所の一つに立ち会って一人鳥肌立つような感覚を味わって背筋が伸びたのである。合掌。 pic.twitter.com/pLzryFJwQr
— 幣束 (@goshuinchou) May 28, 2020
教育委員会の方々と一緒に案内して下さった地元の年輩の方は、この七人ミサキの岩に毎年念仏を捧げる「役目」の方であるようだった。この役目がどのように運営されているかとか知りたかったが、あまり深入りは避けた。しかし、今も変わらず七人ミサキに供養の念仏を捧げる風習は毎年必ず行われている。 pic.twitter.com/pa7xhLCbfS
— 幣束 (@goshuinchou) May 28, 2020
南予の山中に、我が国の怨霊(御霊ではない)信仰が継続する七人ミサキの伝説の地有り。四国の大地には他にも七人ミサキに纏わる場所や祟るモノを鎮める塚や神社が数多くある。
— 幣束 (@goshuinchou) May 28, 2020
せっかく伊予之二名島に骨を埋める縁で移住したのである。生涯かけてそれらの場所を探求したい。祟られないように…。 終。 pic.twitter.com/i0IrkxrdaO